営業における外向性の理想像・アンビバートの優位性3

前回はアンビバート特性を持つ人財採用と育成や、
アンビバート特性が生かされる場面などをお伝えいたしました。

今回は、外交性が高すぎる場合の課題解決には、
ビッグファイブの他の特性との組み合わせにより緩和される可能性があり、
どの特性が重要になるかについてお話を進めていきます。

1. 協調性(Agreeableness)との組み合わせ

  • 高い協調性は、外向性の強い自己主張や過剰なエネルギッシュさを和らげ、顧客のニーズや感情に配慮した接し方を可能にします。
  • 例えば、顧客との対話中に「押し売り」の印象を与えず、相手の意見に耳を傾け、共感を示すことで信頼関係を構築できます。

2. 感情安定性(Neuroticismの逆)とのバランス

  • 外向性が高いとエネルギッシュですが、そのエネルギーが過剰になると焦りやストレスを与える場合があります。感情安定性が高ければ、冷静で安定した態度を保つことができ、顧客に安心感を与えます。

3. 開放性(Openness)による柔軟性

  • 高い外向性と開放性が組み合わさると、顧客のニーズに応じた創造的で柔軟なアプローチが可能になります。これにより、単一の押し付けがちな営業スタイルではなく、多様な方法で顧客にアプローチできます。

4. 良心性(Conscientiousness)の補完効果

  • 高い良心性は、外向性の行動力に計画性や信頼感を付加します。これにより、営業活動が効率的で、一貫性のあるものとなり、顧客からの信頼を得やすくなります。

実際の研究例

  • PDFの研究でも述べられているように、外向性が高い営業職員が持つ課題(顧客の意見を無視、押し付けがましい態度)は、協調性など他の特性によって部分的に緩和されることが示唆されています【5】。
  • 例えば、外向性の高い営業職員が「協調性の高い行動スタイル」を学ぶトレーニングを受けると、顧客対応が向上する可能性が考えられます。

結論

外向性が高いことは営業において強みですが、それが過剰になった場合でも、他の性格特性(特に協調性や感情安定性)との組み合わせが、課題を緩和し、全体的なパフォーマンスを高める役割を果たします。

採用プログラムの設計

  1. 要件定義
    • 外向性が必要とされる役職で、どの程度の外向性が理想的かを定義します。
    • 併せて、補完する特性(例:協調性、感情安定性)もリストアップします。
  2. 評価ツールの選定
    • Big Five分析などの性格診断ツールを活用し、候補者の性格を定量的に測定します。
    • 性格特性と職務要件の相関性を確認するための基準を事前に設定します。
  3. 面接プロセスの最適化
    • 質問例:
      • 「これまでの経験で、他者の意見に耳を傾けたことで成功した例を教えてください。」
      • 「顧客対応で意見の対立があった際に、どのように対応しましたか?」
    • 外向性の強さだけでなく、協調性や柔軟性を確認できる質問を織り交ぜます。
  4. シミュレーション試験
    • 営業活動のシミュレーションを設け、候補者が顧客とのバランスの取れた対話をできるかを評価します。

研修プログラムの設計

  1. 特性に応じた分化型研修
    • 外向性の高い人向け: 傾聴力向上のワークショップ
      • 顧客の意見を深く聞くスキルの実践。
    • 外向性が低い人向け: 自己主張スキルのトレーニング
      • 効果的に自分の意見を伝える方法を学ぶ。
  2. 補完的特性の強化
    • 協調性や感情安定性を強化するため、ケーススタディロールプレイを導入します。
    • 例: チーム内での意見交換や、顧客への柔軟な対応を模擬する練習。
  3. 定期的なフィードバック
    • 研修後に1on1面談や評価シートを使用し、強化が必要なポイントを共有。
    • TOiTOiのような性格特性可視化ツールを使い、改善進捗を追跡します。

傾聴力を育てる

ビッグファイブ分析において、傾聴力に関連する、または関連すると推察される特性は以下の3つが主に挙げられます。これらは研究や実践の中で、傾聴力に寄与する可能性が示唆されています。


1. 協調性(Agreeableness)

  • 関連性: 傾聴力の最も直接的な関連特性とされます。
    • 協調性が高い人は、他者の感情やニーズに敏感で、共感的な対応を取る傾向があります。
    • 人の話を丁寧に聞き、相手の立場を理解しようとする姿勢が見られます。
  • 具体例:
    • チーム内での意見交換において、協調性が高い人は他者の意見を受け入れ、建設的なフィードバックを提供できる。

2. 感情安定性(Neuroticismの逆)

  • 関連性: 傾聴力を発揮する際に、冷静さや精神的な安定性が必要です。
    • 感情安定性が高い(Neuroticismが低い)人は、自己の感情に流されず、相手の話に集中しやすい。
    • 傾聴中に不安や苛立ちを感じにくく、相手の話に対して忍耐強く対応する傾向があります。
  • 具体例:
    • 顧客対応中にトラブルが起きても、感情安定性が高い人は冷静に対応し、相手の話をしっかり聞いて解決策を見出す。

3. 外向性(Extraversion)の一部

  • 関連性: 一般的に外向性が高い人は話し好きですが、その中でも「社交性(sociability)」や「活気(enthusiasm)」が適度である場合、傾聴力が発揮される可能性があります。
    • 外向性が極端に高すぎない人(アンビバートに近い)は、適切なタイミングで話し、必要に応じて聞くことのバランスを取れます。
  • 具体例:
    • 営業の場面で外向性が高すぎない人は、顧客に圧迫感を与えず、顧客の意見を引き出すことに優れる。

関連する可能性がある他の特性

開放性(Openness to Experience)

  • 関連性: 他者の新しいアイデアや視点を受け入れる柔軟性が傾聴力に貢献する可能性があります。
  • 具体例: 会議で異なる意見が出た場合でも、それを拒否せず、真剣に検討する態度を持つ。

良心性(Conscientiousness)

  • 関連性: 良心性が高い人は、相手の話をしっかり理解しようとする責任感を持つため、傾聴力が向上する可能性があります。
  • 具体例: 重要な会話中に相手の話をきちんと記録し、的確な対応を取る。

結論

最も関連性が高い特性は協調性ですが、他の特性(感情安定性、適度な外向性、開放性、良心性)も傾聴力を補完する重要な要素として考えられます。この組み合わせは、個人の特性に応じた研修や育成プログラムの設計にも活用できます。

最後までご覧いただきありがとうございます。

参考資料

アダム・M・グラント (2013). 『Rethinking the Extraverted Sales Ideal: The Ambivert Advantage』, 2024年12月30日アクセス. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0001839213480813

営業における外向性の理想像・アンビバートの優位性4へつづく