前回は日本のエンゲージメントの低さについてお話しました。
ここからは日本のエンゲージメントの低さの理由についてです。
東アジアと日本の違い
東アジアの企業文化や風土には、
日本と似た点もありますが、
エンゲージメントにおいて少し異なる特徴が見られます。
以下は、一般的な東アジア地域(例:中国、韓国、台湾など)の企業文化の特徴です:
- 集団主義と協調性の重視:
- 東アジアの多くの国々では集団主義が根付いており、
チームワークや協力が重視される傾向があります。
メンバー同士の信頼や支え合いを大切にする文化が、
エンゲージメントを高める要素になっています。
- 東アジアの多くの国々では集団主義が根付いており、
- 明確な階層とリーダーシップの期待:
- 東アジアでは、日本と同様に上下関係が強調される文化も見られますが、
近年はリーダーがメンバーの意見を聞く姿勢や
フラットな組織構造を採用する企業も増えています。
特に若い世代を中心に、
意見を発言しやすい環境作りが進んでいる企業が多く、
これがエンゲージメントの向上につながっていると考えられます。
- 東アジアでは、日本と同様に上下関係が強調される文化も見られますが、
- 成果主義の浸透:
- 韓国や中国では、成果主義が日本以上に浸透しており、
業績が評価や昇進に直結しやすい傾向にあります。
これにより、成果を上げるための意欲がエンゲージメントを
高める要因の一つとされています。
- 韓国や中国では、成果主義が日本以上に浸透しており、
- 働き方改革の推進と柔軟な労働環境:
- 特に韓国や台湾などでは、
日本よりも早く働き方改革が進み、
リモートワークやフレックスタイム制が導入される企業が増えています。
柔軟な働き方が従業員満足度を高め、
エンゲージメントに良い影響を与えているとされています。
- 特に韓国や台湾などでは、
- 若い世代の価値観の変化:
- 東アジアの企業では、
若い世代がワークライフバランスや自己成長の機会を重視する傾向が強く、
企業もこれに合わせてエンゲージメントを重視する文化へと変化しています。
- 東アジアの企業では、
東アジアの多くの企業では、
日本と同じく集団や協力が重視されますが、
近年はリーダーシップの柔軟化や成果主義の導入など、
日本とは異なるエンゲージメント促進の取り組みが進んでいることが、
エンゲージメント率の違いに影響を与えていると考えられます。
日本人の感情について
日本の職場における感情経験の変化について、
このレポートには具体的なデータが記載されています。
以下は報告されている内容です:
- ストレス:
- 日本では41%の従業員が「昨日、ストレスを感じた」と
回答しています。これは東アジア地域平均の46%より低く、
世界平均の41%と同等です。
日本の職場でもストレスが高いことが伺えますが、
東アジアの他国と比較するとやや低い水準です。
- 日本では41%の従業員が「昨日、ストレスを感じた」と
- 怒り:
- 「昨日、怒りを感じた」と答えた日本の従業員は13%で、
東アジア地域平均の17%や世界平均の21%よりも低い結果となっています。
日本の職場では怒りの表現が抑えられる傾向があり、
感情を表に出さない文化が影響している可能性があります。
- 「昨日、怒りを感じた」と答えた日本の従業員は13%で、
- 悲しみ:
- 「昨日、悲しみを感じた」と回答した日本の従業員は8%で、
これは東アジア平均の12%や世界平均の22%よりも低い数値です。
日本では、悲しみも含め、
ネガティブな感情を職場で表すことが抑制される傾向があると考えられます。
- 「昨日、悲しみを感じた」と回答した日本の従業員は8%で、
日常生活の「成功感」
レポートでは次のような内容が示されています:
- 成功感の評価:
- 「成功感」は、個人が現在および将来の生活に対してどのように感じているかを示す指標です。
ギャラップのCantril Self-Anchoring Striving Scaleを使用し、
個人に「自分の人生が最高である」と感じるレベル(0~10段階)を
評価してもらいます。現在の生活と5年後の生活に対する期待を聞くことで、
今後の人生に対する楽観性や期待度を測定します。
- 「成功感」は、個人が現在および将来の生活に対してどのように感じているかを示す指標です。
- 評価結果の分類:
- このスコアに基づき、ギャラップは回答者を
「成功している(成功)」「困難を感じている(困難)」
「苦難に直面している(苦難)」の3つのカテゴリーに分類しています。 - 成功とされる人は、現在の生活を「7」以上、
5年後の生活を「8」以上と評価している人です。
この層は、一般的に健康問題やネガティブな感情
(ストレス、悲しみ、怒りなど)が少なく、
幸福感や意欲が高い傾向があります。
- このスコアに基づき、ギャラップは回答者を
- 日本の成功感の割合:
- 日本では、成功していると感じる人の割合は29%と報告されています。
これは、東アジア地域平均の32%、全世界平均の34%を下回っており、
日本では将来に対する楽観的な見通しが他地域よりも低い傾向が示唆されています。
- 日本では、成功していると感じる人の割合は29%と報告されています。
この「成功感」の測定により、
生活に対する満足度や将来の期待が把握され、
職場での幸福度や職場環境改善のための施策の効果を
評価する一つの指標として活用されています。
日本人は我慢し、自分の感情にきづいていない
東アジアや日本の職場でネガティブな感情の表出が少ない背景には、
確かに「我慢」や「自分の感情に気づいていない」といった要因があると考えられます。
以下にその要因を詳しく説明します:
- 文化的な忍耐と我慢の美徳:
- 日本や東アジアでは、
忍耐や自制が美徳とされる文化が根付いています。
このため、職場での怒りや悲しみなどのネガティブな感情を抑え、
我慢することが一般的です。
また、感情を表に出さずに調和を保つことが、
集団内での調和や協調を優先する文化に合致しています。
- 日本や東アジアでは、
- 集団主義と同調圧力:
- 集団主義が根強い東アジア社会では、
個人よりも集団の和を尊重する傾向があり、
個人の感情表出が周囲に迷惑をかけるとされることがあります。
このため、ネガティブな感情を表現せず、
抑えることが求められることが多いです。
- 集団主義が根強い東アジア社会では、
- 自己認識と感情への気づきの不足:
- 東アジアでは、感情を自己認識する教育や訓練が他地域に比べて少なく、
自分の感情に気づきにくい傾向も指摘されています。
多くの人が感情を抑え込むことに慣れているため、
自分の内面の感情に気づきにくい状況が生まれることもあります。
- 東アジアでは、感情を自己認識する教育や訓練が他地域に比べて少なく、
- 心理的安全性の欠如:
- 特に日本では、心理的安全性が十分に確保されていない職場が多く、
従業員が自由に感情を表すことを躊躇する傾向が見られます。
感情を表に出すことで否定的な評価を受けることを恐れ、
感情を抑えることが習慣化している可能性があります。
- 特に日本では、心理的安全性が十分に確保されていない職場が多く、
このように、東アジアや日本の職場文化における感情の抑制には、
文化的な価値観や職場環境の影響が大きく関わっていると考えられます。
雇用情勢と転職意向:
日本では転職を積極的に探している人の割合が33%で、
東アジア地域平均(54%)や世界平均(52%)に比べて低く、
転職意識に関する文化的背景が示唆されています。
文化的背景とはどんなものかを解説。
日本の転職意向が低い背景には、
以下のような文化的・社会的な要因が影響していると考えられます:
- 終身雇用と年功序列の価値観:
- 日本では長年、
終身雇用と年功序列が安定した働き方として定着してきました。
企業は従業員の生活を保障し、
従業員は会社に忠誠を尽くすという相互関係が重視されてきたため、
転職することは安定を手放すリスクと見なされる傾向が強いです。
- 日本では長年、
- 安定志向の強さ:
- 日本では「安定した職に就く」ことが重視されるため、
新しい環境に挑戦することへのリスクを避ける傾向が強いです。
このため、今の職場に留まり続けることがより安全であると考えられることが多く、
転職に対する心理的ハードルが高くなっています。
- 日本では「安定した職に就く」ことが重視されるため、
- 転職に対するネガティブなイメージ:
- 転職を「我慢できない人」「忠誠心のない人」と
見なす考えが依然として残っている企業もあります。
特に年齢が上がるにつれて、
転職が難しくなることも影響しており、
従業員は転職を躊躇する傾向があります。
- 転職を「我慢できない人」「忠誠心のない人」と
- 新しいキャリア選択に対する慎重さ:
- 日本では、他国と比べて新しいスキルやキャリアに対する柔軟性が低いとされ、
転職によって異なる業界や職種に移ることへの心理的な抵抗が強いです。
特に経験や年齢を重ねた場合、
転職先での適応への不安が影響しています。
- 日本では、他国と比べて新しいスキルやキャリアに対する柔軟性が低いとされ、
- 長時間労働の影響:
- 日本では長時間労働が常態化しており、
これが転職活動の障壁となっています。
多忙なために転職活動に時間を割く余裕がないという現実的な要因も、
日本における転職意向の低さに寄与しています。
- 日本では長時間労働が常態化しており、
- 転職支援や教育の不足:
- 他国と比較してキャリアチェンジや転職のための
支援や教育の機会が限られていることも、
日本における転職意識が低い一因とされています。
- 他国と比較してキャリアチェンジや転職のための
これらの文化的背景から、転職に対する心理的なハードルが高く、
日本の労働市場において転職意向が他の地域よりも低い結果となっていると考えられます。
職場環境の改善と従業員エンゲージメントの向上
特に管理職の役割が重要です。以下に、
具体的な施策をいくつかご紹介します。
- 定期的な1on1ミーティングの実施: 上司と部下が定期的に個別面談を行い、
業務の進捗や課題、キャリアの目標などを共有します。
これにより、従業員のモチベーション向上や信頼関係の構築が期待できます。 - 明確な目標設定とフィードバックの提供: 従業員に対して明確な業務目標を設定し、
達成度合いや改善点について定期的にフィードバックを行います。
これにより、従業員は自らの成長を実感しやすくなります。 - キャリア開発と成長機会の提供: 研修やスキルアップの機会を提供し、
従業員のキャリア成長を支援します。これにより、
従業員のエンゲージメントが高まります。 - オープンなコミュニケーションの促進: 意見やアイデアを自由に共有できる職場環境を整え、
従業員が安心して発言できる文化を育成します。これにより、
組織全体の活性化が期待できます。 - 適切な評価と報酬制度の導入: 成果や努力を正当に評価し、
それに見合った報酬を提供することで、
従業員のモチベーションを維持・向上させます。
これらの施策を通じて、
管理職は従業員との信頼関係を築き、
エンゲージメントの向上と職場環境の改善を図ることができます。
HR CONCIERGEが提案する改善策
日本の職場において心理的安全性を確保した組織文化を醸成することが、
非常に重要な改善点です。
心理的安全性は、
従業員が自分の意見やアイデアを恐れずに表現できる環境を指し、
エンゲージメント向上や生産性の向上に密接に関わっています。
以下の理由から、心理的安全性が日本の職場改善の優先項目として適していると考えられます。
- 自由な発言が生むイノベーション:
- 心理的安全性が高い環境では、
従業員は新しいアイデアを提案しやすく、
失敗を恐れずにチャレンジができます。
これにより、イノベーションが促進され、組織全体が活性化します。
- 心理的安全性が高い環境では、
- コミュニケーションの改善:
- 日本の職場では、
上下関係や同調圧力が強いことから、
意見が発信されにくい状況があります。
心理的安全性を確保することで、
従業員が意見やフィードバックを積極的に交わしやすくなり、
コミュニケーションが円滑になります。
- 日本の職場では、
- エンゲージメントとモチベーションの向上:
- 心理的安全性を感じられる職場では、
従業員が自分の役割に意義を見出しやすくなり、
エンゲージメントが向上します。
特に日本のエンゲージメント率が低い現状では、
心理的安全性の確保がモチベーションアップに大きく寄与します。
- 心理的安全性を感じられる職場では、
- 離職率の低下:
- 心理的安全性が高い組織では、従業員が職場に満足し、
離職率の低下が期待されます。
特に日本では、転職意向が低いものの、
心理的安全性が欠如した職場では離職が増加するリスクがあります。
- 心理的安全性が高い組織では、従業員が職場に満足し、
- 世代間のギャップ解消:
- 若い世代が求めるのは、対話や成長の機会、
自己表現の場です。心理的安全性を重視することで、
世代間のギャップが縮まり、
異なる世代の意見や価値観を尊重する文化が醸成されます。
- 若い世代が求めるのは、対話や成長の機会、
日本の職場で心理的安全性を確保することは、
持続的な組織改善の基盤となり得る重要な施策です。
最後までご覧いただきありがとうございます。
参照資料
「参考:Gallup, Inc.『日本の職場の現状』(2024年発行)」
リンク:https://www.gallup.com/
追伸:
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