今回は2024年10月1日の賃上げの記事から、
地方創生や活性化について考えるきっかけになればと。
最賃上げ異例の後押し
10月以降、各都道府県で最低賃金が引き上げられる。もっとも高い東京都は1163円に上がり、神奈川県1162円や大阪府1114円、愛知県1077円など都市部では1000円を大きく上回る。岩手や愛媛、島根など27県では厚生労働省が示した引き上げの目安50円を大幅に上回った。特に最低賃金が全国で2番目に低い徳島県は84円と異例の引き上げ幅となった。「徳島ショック」とも言われる衝撃の上げ幅の背景にあるものとは。
焦点
「前例踏襲のやり方に一石を投じた」。後藤田正純・徳島県知事は9月6日の記者会見でこう言及した。
最低賃金は毎年改定され、厚生労働省設置の中央の審議会が7月下旬ごろに目安を示す。8月以降、各都道府県の労働局が設ける地方の審議会で目安を参考にしながら最終的な額を決める。
審議会はいずれも労使の代表と有識者で構成され、自治体が関与する余地はない。これまで目安と大きく異なる額が地方で決まることは少なかったが、昨年から大幅に上回る事態が続出。佐賀県は目安から8円上乗せした。後藤田知事は審議会の初回会合に出席し、「現実に向き合うのは我々地方だ。中央の目安を基に決めるのは時代が違う」と訴え、前例にとらわれない議論を委員に求めた。引き上げ額の念頭にあったのは、鳴門海峡を挟んだ淡路島兵庫見の1001円(2023年度)。
徳島県の896円とは100円以上おん開きがあり、この差を埋めるため1000円を超えるよう大幅な引上げを目指していたという。通常、経営者側の委員は企業の支払い負担を懸念し、引き上げに慎重だ。だが、徳島県の審議会では「防衛的な賃上げの脱却が必要だ」と前向きな姿勢に転じていた。背景には、都市部などへの人材の流出が相次ぎ、人手不足が企業継続最大のリスクになるという危機感があった。
最低賃金は、①労働者の生計費②賃金③企業の支払い能力の3要素に関連し、一人当たりの県民所得や失業率、消費者物価指数などの指標の順位に着目したのがポイントだった。徳島県の最低賃金は全国で2番目に低かったが、こうした指標の位置付けを考慮すると本来の順位は全国でも「中の上くらいの水準」にあるとした。最低賃金んの中位の水準が930円であるとし、896円の徳島県とは34円の差があるため、目安の50円に上乗せして、引き上げ額の「84円」を導き出した。
大幅な引き上げが経営リスクになりかねないとし、県は生産性向上に向けて設備投資や賃上げした企業を対象に、独自の醸成金を支給する方針も打ち出した。
徳島が大幅な引上げを実現できたのは、後藤田知事のキャラクターにもよる。自民党衆議院銀時代に、党雇用問題調査会の初代事務局長を務めるなど労働問題に取り組んできた。23年4月の県知事選でも県民所得の向上なども訴えている。
K年6月には地方版政労使会議「徳島雇用政策協議会」を開き、賃上げについて労使の代表と議論した。こうした後藤田知事による「外圧」が功を奏した面もある。
人口流出懸念、各地引き上げ
徳島に限らず、今回は目安の50円を上回る引き上げラッシュとなった。目安自体も春闘での賃上げを反映して過去最高となり、決して低い額ではない。目安は地域の経済状況におうじてA〜Cの3ランクに分けて示すが、特に賃金の低いCランクの件で大幅な引き上げとなった。岩手と愛媛は9円、島根は8円、鳥取が7円、佐賀や鹿児島、沖縄は6円、それぞれ目安を上回った。いずれも人口流出への危機感が、目安を上回る根拠となったという。審議日程も焦点となった。昨年度、目安学通りの決定をしたものの、他県で引き上げが続出し、結果として全国最下位に転落した岩手県。今年度は審議日程を遅らせ、他県の動向を睨みながら最低賃金を決めた。審議日程が後ろにずれ込むほど、引き上げ額が高くなる傾向は昨年度と同様だ。昨年度の最終となった佐賀県は8円、今年度の徳島県は34円と、いずれも全国最高の上乗せとなった。
各地の引き上げラッシュに対し、Cランクの底上げを訴えてきた連合幹部は「全国どこでも1000円の必要性を裏付けする」と歓迎する。一方、経済団体関係者は「最低限度の生活保障の趣旨と、賃上げの必要性は切り分けるべきだ。山間地や農村、漁村を含めた地方の小規模な事業所の支払い能力や経営への影響を検証する必要がある」と懸念する。
最低賃金に詳しい北海道大学の安部由紀子教授(労働経済学)は「都市部と地方部が同じペースで賃金上昇させる必要はなく、ある程度は地方の自主性に委ねるべきだ」と評価する。その一方で知事の介入については「制度上、審議会において知事は特段の発言権があるわけではなく、その意味で審議のルールが守られたのか疑問が残る。県独自の支援策について、県民の納得が得られるかも問われる」とも指摘した。
参考記事ー毎日新聞“最賃上げ 異例の後押し”,2024年10月1日発行
原文ママ
非財務的価値の創造
この記事から人口流出対策として賃金を大幅に上げた経緯がありますが、
他にも非財務的な価値を地方で創造していくことが急務かと考えられます。
最低賃金の引き上げは
地方の人口流出対策として大きな役割を果たしており、
今回の「徳島ショック」のような事例はその一環です。
しかし、最低賃金の引き上げだけでは
根本的な人口流出の問題を解決できない可能性が高いと考えられます。
なぜなら、
地方から都市部への人材流出の背後には、
賃金だけでなく、仕事の選択肢、生活の質、
教育、医療、インフラといった非財務的な要素が強く影響しているからです。
非財務的な価値を地方で創造することは、
住みやすさや働きやすさの向上に直結し、
地方の魅力を高める手段となります。
具体的には以下のような取り組みが急務であると考えます。
教育とスキル開発の充実
都市部に比べて選択肢が限られていることが、
地方における若者や労働者の離職の一因です。
スキルアップやキャリア開発の機会を
地方でも充実させることで、
都市部と競争できる労働市場を作り出すことが重要です。
リモートワークの促進
都市部に移動しなくても働ける環境が整えば、
地方での暮らしを維持しつつ
都市部の企業で働くことが可能になります。
コロナ後、リモートワークが普及していますが、
地方でもそのインフラ整備を進めることで、
労働の多様化が期待できます。
地方の生活の質向上
賃金に加えて、
地方での暮らしの利便性を高めるためのインフラ整備や、
医療、教育の充実も大きな要素です。
住み続けたいと思える環境作りが進むことで、
人口流出を食い止める可能性があります。
地域ブランドの強化
地方の特産品や観光資源などを活用し、
地域のブランド力を高めることも重要です。
地域特有の文化や歴史を生かした取り組みを進めることで、
地域に住むことの価値を高め、外からの移住者を増やすことも可能です。
これらの非財務的な価値を地方で創造することで、
地域の魅力を高め、持続的な発展を目指すことが可能となると考えます。
地方創生が進まないボトルネック
地方創生が進まない要因として、
いくつかのボトルネックが挙げられます。
これらの問題が存在するため、
地方創生の取り組みが十分に進まず、
効果が限定的になっているケースが多く見受けられます。
リーダーシップの欠如と行政の縦割り構造
地方創生には強力なリーダーシップと一貫したビジョンが必要ですが、
地方自治体内でのリーダー不足や、
縦割り行政による部門間の連携不足が大きな障害となります。
これにより、
複数の施策がバラバラに進行し、
地方全体としての一貫した戦略が欠けていることが問題です。
人口減少・少子高齢化
人口減少と少子高齢化が進む中、
特に若年層が都市部へ流出しているため、
地方における労働力不足が深刻化しています。
この問題に対処できなければ、
どれだけ魅力的な地域づくりを行っても労働力や担い手が不足し、
地方経済の持続可能性が損なわれます。
資金や投資の不足
地方自治体には、
地方創生に取り組むための十分な資金がない場合があります。
また、
民間からの投資も都市部に比べて少なく、
地方のインフラ整備やビジネスチャンスの
創出が進まないという問題も大きな課題です。
補助金や助成金の制度はあるものの、
それが短期的な対応にとどまってしまうこともよくあります。
人材不足と地域での雇用機会の欠如
地方には、
専門的なスキルを持つ人材やリーダーシップを
発揮できる人材が不足しています。
さらに、
地域での雇用機会が限られているため、
特に若者が働く場がなく、
都市部へ流出してしまう問題があります。
これに対して、
地方における産業振興や、
新たな雇用機会の創出が必要ですが、
既存の産業構造が変わらない限り難しい部分があります。
インフラとデジタル技術の遅れ
物理的なインフラ整備(交通、通信、医療、教育施設等)
が遅れている地方では、
都市部と同じ条件で暮らすことが難しいため、
住み続けることや新たな人材の移住を
促す上での大きなハードルとなります。
また、
デジタルインフラや技術の導入が遅れている地域では、
テレワークやリモートビジネスの推進が進まず、
経済的な発展が滞ることもあります。
地域住民の参加不足
地方創生の取り組みが進まない理由の一つに、
地域住民が積極的に参加していない、
もしくは住民との意見交換が不十分な点が挙げられます。
行政や企業が主導する形では、
地元住民が自分たちの未来に対して関心を持たず、
変革に対する意欲が低い場合もあります。
住民参加型の取り組みを進め、
コミュニティ全体の一体感を高めることが必要です。
短期的視点の政策と持続可能性の欠如
地方創生の取り組みは、
しばしば短期的な効果を期待される傾向がありますが、
地方の再生には長期的な視点が必要です。
選挙のサイクルや予算の制約などの影響で、
持続的な取り組みが難しく、
目先の成果を重視する政策が多いことがボトルネックとなります。
地域間競争の激化
地方同士での競争も、
創生の取り組みを阻む要因の一つです。
人口や企業誘致、
観光客の取り合いが激化し、
各地域が互いに独自の魅力を打ち出すための差別化が難しくなっています。
この結果、地域の資源や特産品のブランド化においても競争が激しくなり、
うまく行かないケースが増えています。
これらのボトルネックに対処するためには、
政府や民間、
地域住民が一丸となって、
長期的かつ一貫した地方創生のビジョンを持つことが求められます。
持続可能な発展を目指すためには、
資金とリーダーシップ、
そして地域の固有の強みを最大限に生かした戦略が必要です。
地域住民というボトルネック
地元の力を持つ人々の能力不足や、
地域住民や働く人々の潜在力を活かしきれていないことが
大きな問題として挙げられます。
リーダー層の意思決定や戦略立案が十分でない場合、
以下のような問題が生じる可能性があります。
変革への抵抗と現状維持バイアス
地方のリーダー層が変化を恐れ、
過去の成功体験や慣習に固執することで、
改革が進まないことがあります。
これにより、
新しいアイデアや外部の視点が活かされず、
地域の停滞が続くことになります。
人材活用の失敗
優れたリーダーシップが発揮されない場合、
地域や組織にいる優秀な人材が適切に評価されず、
適材適所で活躍できない状況が生まれます。
これにより、
地域の成長を支えるべき人材が流出するリスクが高まります。
イノベーションの欠如
リーダー層がリスクを恐れ、
新しい取り組みや技術を導入しないことが、
地方創生の停滞に繋がります。
特にデジタル技術や新しい産業の導入が遅れ、
地域が全国的な競争に置いていかれることになります。
地域間の連携不足
地域リーダーが外部との連携や
他地域との協力を軽視する場合、
資源の共有やノウハウの交換が行われず、
孤立してしまうことがあります。
これが地域の発展を阻害し、
競争力の低下を招きます。
こうした状況を打開するためには、
リーダー層の能力向上や、
リーダー自身が他者の力を引き出し、
活かすことが重要です。
権力を持つ人々がいかにして地域住民や人材の声を反映し、
活用できるかが、地方創生の成否を左右する大きな要因だと言えるでしょう。
地域を活性化させようとする若者が活躍できる環境を作るには、
以上のことに命懸けで取り組む必要があるのです。
あなたならどのようなことができると考えますか?