オープンブックマネジメント(OBM)とは

ほとんどの中小企業の経営者は、
会社を経営していくためにまず売上を追います。
しかし、それだけでは会社は成り立ちません。
多くの経営者は数字、つまり売上を追うことに集中しがちです。

初めのうちは借金を抱えていることが多く、
その返済のために売上を見てしまうのは自然なことです。
経営をしている中、預金口座に返済するお金がないため、
売上アップを考えざるを得ない状況になることはよくあることです。

しかし、会社が存続していくためには、
売上アップだけでは不十分だということは、
多くの経営者が実感していることです。確かに、
経営していくには、理念や指針も重要ですが、
今回はオープンブックマネジメント(OBM)の話に焦点を当てます。

OBMの必要性

OBMとは、
企業や組織がその財務情報や業績データを
全従業員に共有する経営手法のことです。

この手法の目的は、従業員が企業の経営状況を理解し、
自分たちの役割や貢献がどのように
業績へ影響を与えるかを認識することで、
企業全体のパフォーマンス向上へつながります。

従業員と経営者との間で、
企業の状態を情報共有をすることです。

OBMの特徴

  1. 財務情報の共有:
    • 企業の収益、費用、
      利益などの財務データを全従業員に公開します
    • 定期的に経営状況や業績に関する報告を行います
  2. 教育とトレーニング:
    • 従業員が財務データを理解し、
      分析できるように教育やトレーニングを行います
    • 財務情報の読み方や解釈方法を学ぶ機会を提供します
  3. 透明性の確保:
    • 経営陣と従業員の間の信頼を築くために、
      経営の透明性を高めます
    • 重要な意思決定や戦略についてもオープンに話し合います
  4. 従業員のエンゲージメント向上:
    • 従業員が企業の成果に対して直接的な
      影響を与えることができると感じることで、
      モチベーションやエンゲージメントが向上します
    • 成果に基づく報酬制度(例えば、利益分配制度など)
      を導入することが一般的です

※中小企業では経営者がキャッシュフローや
経営数字を把握していることが、
前提となります。

OBMのメリット

従業員のモチベーション向上:
自分の働きが企業の業績にどう影響するかを理解することで、
仕事に対する意欲が高まります

信頼関係の強化: 経営陣と従業員の間の信頼が深まり、
組織全体の連携が強化されます

業績の向上: 全従業員が経営状況を把握し、
業績向上のためのアイデアや改善策を提案しやすくなります

成功事例

ある製造業の会社では、
OBMを導入する前は従業員の離職率が高く、
モチベーションが低い状況でした。
OBM導入後、毎月の財務状況を全社員に共有し、
会社の目標達成に向けた進捗を明示しました。
これにより、従業員は自分たちの貢献が会社全体の成果にどう影響するかを理解し、
モチベーションが向上しました。

結果として、離職率が大幅に低下(20%〜30%の間で推移)し、
社員のエンゲージメントが向上しました。

OBMのデメリット

  • 情報の機密性: 競争力に関わる機密情報が外部に漏れるリスクがあります
  • 従業員の不安: 財務状況が悪化している場合、
    その情報を知った従業員が不安を感じる可能性があります
  • 教育コスト: 従業員全員に対する財務教育や
    トレーニングにコストと時間がかかることがあります

会社にとって情報漏洩は大きな打撃を受けます。
情報の開示には慎重さが欠かせません。
情報開示対策をお伝えします。

情報開示対策

情報開示は階層化して、
経営陣と全社員に共有する情報を区別します。

情報の取り扱いや明確なポリシーを作成し、周知徹底する
ことで、漏洩リスクを最小限に抑えます。

社員へは情報セキュリティに対して、具体的な対策をするための
トレーニングを定期的に行います。

人を大切にする企業を目指して

OBMは経営する上では避けていけない施策です。
人を大切にすること。関わる人たち、社員の家族、
取引先、お客様も幸せにするためのものであると、
私は考えています。

海外のサイトにはなりますが、OBM施策の参考にどうぞ。

Wall Street Mojo

このサイトでは、OBMの定義、具体例、
利点と欠点について詳しく説明しています。
例えば、Pool Covers, Inc.という会社がOBMを導入した事例では、
従業員が財務情報を理解し、コスト削減に取り組むことで、
実際にボーナスを獲得するような成功事例が紹介されています。
また、R.R. Donnelley & Sonsの事例では、従業員が高い関与を持ち、
会社の運営に直接影響を与える決定を行う様子が描かれています。

National Center for Employee Ownership (NCEO)

NCEOのサイトでは、
OBMを実践している企業とその競合他社との比較研究を通じて、
OBMの効果を数値で示しています。この研究によれば、
OBMを導入した企業は売上と雇用の増加率が高く、
特に従業員所有の企業では顕著な成果が見られました。

The Great Game of Business

このサイトでは、
OBMの実践方法やそのメリットについて詳しく説明しています。
例えば、企業がどのようにして従業員に財務知識を教え、
彼らが会社の目標達成にどう貢献するかを
理解させるかについての具体的なステップが紹介されています。

ZingTrain

ZingTrainのサイトでは、
OBMを導入する際の具体的な手順や、
成功するためのヒントが提供されています。
特に、「ハドル」と呼ばれる定期的なミーティングの運営方法や、
各財務ラインのオーナーを決定する方法など、実践的なアドバイスが豊富です。

いかがでしたでしょうか。

オープンブックマネジメントはガラス張りの経営と言われている手法です。
自律的な組織へ変えていくための手法でもあります。
どこまで情報共有をするか。頭を悩ませる手法ですが、
経営者と同様の視座を持ってもらい、組織を運営していく手法です.

万が一の対策にもなってきます。
自律的な組織へと昇華すれば、経営者が現場にでて売上を作るのではなく、
社員が役割をこなし、
経営者は経営者の仕事をするという環境が整えることが可能となってきます。

何かあってからでは、遅すぎるのです。
将来の組織へのギフトのために、
経営者が経営者の仕事ができるようにするために。

最後までご覧いただきありがとうございます。