海外での施策
企業が取引先や関わる人材を含めた広範なリスク管理を行い、
長期的な視点で情報漏洩やコンプライアンスに対する対策を強化するために、
いくつかの施策が導入されています。
以下はその主な施策です。
1. サプライチェーン全体のコンプライアンス基準設定
パートナーに対するコンプライアンス要件の義務付け:
多くの企業では、
サプライチェーンや取引先にも自社の
コンプライアンス基準を適用することを求めています。
たとえば、
取引先が自社の倫理基準やデータ保護基準に
従うことを契約に含めることで、
リスク管理をサプライチェーン全体に拡張しています。
サプライヤー監査:
定期的な監査やコンプライアンス評価を実施し、
取引先のリスクを評価する仕組みを導入しています。
これにより、
企業は取引先のコンプライアンス状況や情報管理体制を把握し、
不適切な場合は早期に改善を要求することができます。
2. 第三者リスク管理(TPRM: Third-Party Risk Management)システムの導入
リスク管理プラットフォームの利用:
取引先のリスクを評価し、
継続的にモニタリングするために専用のリスク管理プラットフォーム
(例:SAP Ariba, Coupa)を導入しています。
これにより、
取引先やビジネスパートナーのリスクが発生した際にアラートが発信され、
迅速な対応が可能になります。
リスク評価と継続的モニタリング:
取引先ごとに情報保護やコンプライアンスリスクを定量的に評価し、
契約締結後も継続的にリスク状況を追跡する体制が整えられています。
3. グローバルなデータ保護基準の採用
GDPR(EU一般データ保護規則)準拠:
欧州連合(EU)のGDPRをはじめとした
厳格なデータ保護規則に準拠する企業が増えており、
パートナーにも同様の基準を要求することで、
情報漏洩リスクを軽減しています。
GDPRは、
個人データの取り扱いに厳しい規制を設けているため、
これを採用することで、
リスク管理の水準を引き上げることができます。
データの最小化と暗号化:
取引先とのデータのやり取りにおいて、
必要最小限のデータのみを共有し、
暗号化技術を使用して外部への流出を防止する対策が一般的です。
4. 内部通報制度と倫理ホットラインの設置
内部通報システム:
コンプライアンス違反やリスクが発生した際に、
従業員や取引先が匿名で報告できるシステムを導入しています。
この制度により、
企業内部や取引先での違反を早期に発見し、
対応することが可能です。
第三者通報ホットライン:
外部の第三者機関が運営する通報窓口を設けることで、
従業員や取引先からの通報が経営層に迅速に伝わる仕組みが整えられています。
5. 企業文化の浸透とトレーニング
定期的な倫理・コンプライアンス教育:
全従業員や取引先に対して、
企業の価値観や倫理基準に基づく教育を定期的に実施しています。
企業文化としてのコンプライアンス意識を高め、
組織全体に倫理文化を浸透させる取り組みです。
シナリオベースのトレーニング:
特にリスクの高い業務や取引先に対しては、
実際の事例を基にしたシナリオベースのトレーニングを実施し、
リスクに対する対応能力を強化しています。
6. ISOやISMSなどの認証取得
ISO 27001やISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)
国際規格の認証取得を進め、
情報セキュリティ体制の整備を図っています。
これにより、
取引先や顧客に対して信頼性をアピールし、
リスク管理の取り組みを可視化することで信頼関係の強化に役立てています。
まとめ
海外の企業は、
取引先を含めたリスク管理において、
サプライチェーン全体にわたる監視体制や
リスク管理プラットフォームの活用、
第三者リスク管理システムの導入、
そして厳格なデータ保護基準の適用といった
多層的な施策を導入しています。
これにより、
情報漏洩やコンプライアンス違反に対するリスクを軽減し、
長期的なビジネスの信頼性を確保するための対策を講じています。
日本での施策
日本においても、
企業が取引先や関係者を含む広範なリスク管理を行い、
情報漏洩やコンプライアンスに対するリスクを軽減するために、
いくつかの対策が導入されています。
以下は、その代表的な施策です。
1. ISMS認証の取得と適用
ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)や
ISO 27001の認証取得が多くの企業で進んでいます。
これにより、
情報管理の基準が厳格に設定され、
第三者に対するセキュリティリスクが軽減されると同時に、
外部への信頼性も高まります。
また、こうした認証は、
企業全体における情報管理の統一化を図るために重要とされています。
2. サプライチェーンリスク管理(TPRM: Third-Party Risk Management)の強化
- 多くの日本企業が、
取引先やサプライチェーン全体の
コンプライアンス基準を評価・監督する仕組みを導入しています。
例えば、
取引先に対して倫理基準やデータ保護基準を共有し、
遵守することを契約に含めることで、
外部パートナーとのリスク管理を強化しています。 - パートナー監査
主要な取引先に対して定期的な監査を実施し、
データ保護やコンプライアンス体制をチェックすることで、
リスクの早期発見と対応を可能にしています。
3. 従業員と取引先向けのコンプライアンス教育
- 従業員や取引先に対するコンプライアンス教育の
定期的な実施が進められています。
これには、
企業の価値観や倫理基準に基づいた研修プログラムが含まれ、
特に情報漏洩やデータ管理に関する具体的な
指針や実践が提供されます。
取引先にも教育内容を共有することで、
リスク管理の一貫性を図ります。
4. 内部通報制度と第三者ホットラインの設置
- 多くの企業で、
従業員が匿名でコンプライアンス違反を
報告できる内部通報制度が導入されています。
また、
外部の第三者機関が運営するホットラインも設置され、
取引先や関連業者も含めたリスクの早期発見を目指しています。 - この制度により、
従業員や関係者が違反を報告しやすい環境を整えることで、
潜在的なリスクの早期発見と対応が可能になっています。
5. データ暗号化とアクセス管理の強化
- 日本の企業でも、
特に機密情報や個人データの管理において、
データ暗号化やアクセス管理の厳格化が進んでいます。
例えば、
アクセス権限を役職や業務内容に応じて細かく設定し、
不必要なアクセスを制限することで、
情報漏洩リスクを低減しています。 - また、
データのやり取りの際には、
暗号化技術や認証システムを導入することが一般的になりつつあります。
6. 業界標準とコンプライアンス基準の設定
- 日本では、
業界ごとに適用されるコンプライアンス基準や
ガイドラインが策定されており、
これに従うことで企業間のリスク管理を標準化しています。
例えば、
金融業界や医療業界では、
個人情報の保護に関する厳しい基準が求められています。 - 自主規制団体の設立
業界ごとの自主規制団体が設定した
ガイドラインや監視体制に準拠することで、
業界全体でのリスク管理意識が高まり、
企業が従うべきコンプライアンス基準が明確化されています。
7. 情報漏洩の際の対策シミュレーションと訓練
- 企業が情報漏洩が発生した際のリスク対策として、
対応シミュレーションを実施しています。
万が一の漏洩発生時に迅速な対応ができるよう、
関係者とともに定期的な訓練を行い、
リスク管理体制の実効性を高めています。
まとめ
日本企業でも、
ISMS認証やサプライチェーンリスク管理の強化、
従業員や取引先に対するコンプライアンス教育の充実、
内部通報制度の整備、
業界標準の遵守など、
広範なリスク管理を進めています。
こうした施策を通じて、
情報漏洩リスクやコンプライアンス違反の可能性を低減し、
信頼関係の強化に取り組んでいます。
また、
データ保護や対応体制の整備は、
企業の信頼性向上や取引先との関係強化にも寄与しています。
持続可能な倫理文化と信頼関係を構築するために
日本の倫理・コンプライアンスプログラムに必要なのは以下の5点です:
1トップマネジメントの関与強化:
取締役会がE&Cの監督に積極的に関与し、企業文化全体でコンプライアンス意識を浸透させる。
2サプライチェーン全体のリスク管理:
取引先にも基準を適用し、監査や評価を通じてリスクを把握・管理する。
3コンプライアンス教育の充実:
従業員や取引先に対する定期的な教育と、実践的なシナリオを用いたトレーニングの実施。
4強固なデータ保護対策:
データ暗号化、アクセス管理の強化、情報漏洩対応シミュレーションの実施。
5透明性のある通報制度の導入:
内部・第三者通報窓口を設置し、早期リスク発見と対応の体制を整える。
これらを組み合わせることで、
持続可能な倫理文化と信頼関係が構築可能となります。
グローバルスタンダードを手にすることが、
これからの時代を生きていく武器であると考えています。
世界は再構築されつつあると感じています、
どのように生きていくのか。
不透明な時代を生き抜くヒントになれば幸いです。
- 参考資料