心理的安全性の本質

心理的安全性と聞いて、
聞いたことがないという方も多いと思います。

心理的安全性が組織にあることで
生産性が上がりやイノベーションが生み出されやすくなる
ということが実証されています。

心理的安全性をもっと広められたらという思いを込めて、
心理的安全性についてお話ししていきます。

心理的安全性とは

個人が組織やグループ内で自由に
意見を表明できる状態を指します。

失敗や批判を恐れず、
自分の考えを率直に共有できる環境が
あると感じられることです。

この状態では、
個人はリスクを取って新しいアイデアを提案したり、
質問をしたり、問題を提起したりすることができ、
他者からのネガティブな反応を恐れません。

心理的安全性は、
信頼と尊重に基づく人間関係やコミュニケーションの土台となり、
チームの創造性やパフォーマンスの向上に寄与します。

グーグルの「プロジェクト・アリストテレス」

プロジェクト・アリストテレス

グーグルが2012年に開始したプロジェクトで、
最も効果的なチームとは何かを理解するために、
複数のチームを研究した結果です。

グーグルは、
チームのパフォーマンスに影響を与える要素を調査し、
最終的に心理的安全性がチームの成功に
最も重要な要素であることを発見しました。

このプロジェクトの名前は、
アリストテレスの「全体は部分の総和以上である」
という言葉に由来しており、
個々の才能やスキルだけでなく、
チームとしての相互作用が大きな力を持つことを示唆しています。

プロジェクトアリストテレスの研究では、以下の5つの要素が高パフォーマンスチームに共通していることが明らかになりました。

心理的安全性

チームメンバーがリスクを恐れずに発言できるかどうか。

信頼性

メンバーが互いに信頼できるかどうか。

構造と明確さ

チームが明確な目標や役割を持っているか。

仕事の意味

メンバーが自分の仕事に個人的な意味を見出せるか。

仕事のインパクト

メンバーが自分の仕事が
組織にとって重要であると感じられるか。

この中で、最も重要とされたのが心理的安全性であり、
メンバーが自由に意見を交換できる環境がチームの
パフォーマンスに大きく影響を与えることが確認されました。

エドモンソン博士の研究

エイミー・エドモンソン博士は、
心理的安全性の概念を
提唱した著名な組織行動学者です。

彼女の研究は、
チームのパフォーマンスにおける
心理的安全性の重要性を示し、
多くの企業や組織の文化改革に影響を与えました。

エドモンソン博士は、

特に以下の点に注目して

心理的安全性の重要性を解明しました。

チームの学習とイノベーション

エドモンソン博士は、
心理的安全性が高いチームでは、
メンバーが新しいアイデアを試し、
失敗から学ぶことができると指摘しています。

失敗を恐れずに学ぶ文化は、
イノベーションを促進し、
チームの成長を加速します。

医療の現場での研究

彼女の初期の研究では、
医療チームでのミス報告に関する調査を行い、
ミスを報告するチームが実際には
パフォーマンスが高いことを発見しました。

これが、心理的安全性が高いチームでは、
ミスや問題点を率直に話し合える環境が
整っていることを示しています。

フレームワークとしての心理的安全性

エドモンソン博士は、
心理的安全性を「他の人々にとって自分が
リスクを取っても受け入れられ、
サポートされると感じる感覚」と定義しました。

彼女の研究は、企業や組織におけるチームの
効果的なパフォーマンスのために、
心理的安全性が欠かせない
要素であることを強調しています。

2つの研究からわかること

グーグルの「プロジェクトアリストテレス」では、
チームの成功に最も重要な要素として心理的安全性が挙げられました。

エドモンソン博士の研究は、
心理的安全性がチームの学習、
イノベーション、効果的なパフォーマンスに
不可欠であることを示しています。

両者の研究は、現代の組織におけるチーム運営において
心理的安全性が重要であることを実証しており、
企業の文化やリーダーシップに多大な影響を与えています。

心理的安全性の誤解

心理的安全性が日本で「仲良しこよし」
と誤解される理由には、
いくつかの文化的要因や概念の認識の違いが関わっています。

日本独自の文化による誤解

まず、日本の職場文化では和を重んじる風潮が強く、
「みんなで仲良くする」ことが重要視される傾向があります。

このため、心理的安全性という言葉を聞くと、
単に雰囲気の良い、
争いがない環境を意味するように捉えられやすいのです。

しかし、心理的安全性の本質は、必ずしも**「仲良し」**を
意味するものではありません。

エイミー・エドモンソン博士が提唱する心理的安全性は、
リスクを恐れずに意見を述べられる環境であり、
建設的な対話や批判が重要な要素となっています。

誤解が生じる一因

日本では批判や対立を避ける傾向が強く、
本音を言わないことで衝突を避けようとする文化があるため、
心理的安全性が「ぬるま湯」や「仲良しクラブ」
として捉えられがちです。実際には、
心理的安全性の高い環境は、
率直で誠実なフィードバックを行う場であり、
単に気を使って和やかな雰囲気を保つだけでは
効果を発揮しません​。

研究としては、
多くの論文や記事がこの誤解を
解消するために議論を行っています。

例えば、東洋経済オンラインや
他の研究者は、
心理的安全性がただの「仲良し」ではなく、
結果や目標達成に向けた真摯な対話
促進するものであると強調しています。

広江 朋紀.“独り歩きする「心理的安全性」 誤解と本当の意味
「4つの不安」を解消し「7つの効果」を上げる”.東洋経済オンライン.2024/01/12 14:00
https://toyokeizai.net/articles/-/723128(参照2024/09/06)

河原あずさ@書籍.“心理的安全性ある組織=ただの「仲良し倶楽部」ではない”.COMEMO
.2022年8月5日 14:21
https://comemo.nikkei.com/n/n26224176650c(参照2024/09/06)

ピョートル・フェリクス・グジバチ “「心理的安全性」を誤解している人の
3つの勘違い楽しくやさしい職場にすることは目的ではない”.東洋経済オンライン

.2023/03/20 9:00
https://toyokeizai.net/articles/-/656315(参照2024/09/06)

要するに、
心理的安全性は「仲良くする」ことが
目的ではなく、
リスクを恐れずに意見を述べ合い、
建設的に問題に取り組むための
環境作りが本来の目的です。

この誤解を解くためには、
リーダーが明確にその意図を示し、
組織の中で健全なフィードバック文化を育む必要があります。

心理的安全性 ある組織/ない組織

海外で行われた研究では、
心理的安全性がある組織と
ない組織の違いが明確に示されています。

心理的安全性の高い組織

チームメンバーがリスクを
恐れずにアイデアを共有でき、
フィードバックを率直に行うことが可能です。

これにより、創造性や革新が促進され、
チーム全体のパフォーマンスが向上します。

例えば、ある研究では、
心理的安全性の高いチームは
そうでないチームに比べて57%多くの
コラボレーションを行い、
社員の離職率が大幅に低下することが示されています

心理的安全性が低い組織

社員が意見を述べることを恐れ、
自己検閲を行う傾向があります。

これにより、革新の停滞や生産性の低下が発生します。

特に、異なる視点やアイデアが
評価されないため、
組織の成長や問題解決に悪影響を与えます。

また、リーダーシップの欠如や適切な
トレーニングがない場合、
心理的安全性の欠如が長期的な問題として続くことがあります​

具体的な事例としては、
マッキンゼーボストン・コンサルティング・グループの調査があり、
心理的安全性を推進するリーダーシップの必要性が
強調されています。

また、エドモンソン博士による研究も、
心理的安全性が高いチームは学習と
成長に大きく寄与することを証明しています​

このように、心理的安全性の有無は組織の成功に大きく影響し、
特に多様性を受け入れ、
全員が自由に意見を述べられる環境があることが重要です。

不安を抱えていると…

☑️あなたの会社の社員さんは無知だと思われる不安を抱えていませんか?
☑️あなたの会社の社員さんは無能だと思われる不安を抱えていませんか?
☑️あなたの会社の社員さんは邪魔していると思われる不安を抱えていませんか?
☑️あなたの会社の社員さんはネガティブだと思われる不安を抱えていませんか?

そんな不安が引き起こす行動が以下になります。
☑️わかならいと言えない
☑️失敗やミスを隠してしまう
☑️自発的な発言を控えてしまう
☑️本当に重要な指摘ができなくなる

というような生産性を生み出せない
負の組織へと誘ってしまうのです。

これらの不安が日常の中で蔓延することで、
組織は一つの大きな問題に直面します。

社員が自らの能力や存在意義を疑い、
結果として消極的な行動に走ることで、
組織全体の成長と生産性が阻害されるのです。

心理的安全性が確保された環境を提供することによって、
社員は安心して発言し、
失敗を恐れずにチャレンジすることができるようになります。

コミュニケーションを見直し、
信頼と理解に基づく職場文化を育てることで、
組織は真の力を発揮し、
全員が積極的に貢献できる環境を実現することができるのです。

参考サイト・論文
カースティ・ガーディナー博士&カースティ・ガーディナー博士.“Psychological Safety & Positive Psychology: A Leadership Guide”.positivepsychology.com.2024/08/05
https://positivepsychology.com/psychological-safety/(参照2024/09/07)

エド・トンプソン.“Workplace Psychological Safety Is Critical—But Often Lacking”.positivepsychology.com.2024/07/22
https://www.psychologytoday.com/au/blog/a-hidden-force/202407/workplace-psychological-safety-is-critical-but-often-lacking(参照2024/09/07)

Amy Edmondson.“Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams” .Johnson Graduate School of Management, Cornell University.1999/06
https://www.jstor.org/stable/2666999(参照2024/09/07)

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